■『自傷』
ただ、歩いてるだけ。
今、見えるのは自分の足元だけ。
冷たいアスファルトの道だけ。
自然と涙があふれて。
それでも歩いて。
それは自分を傷つけてることだってわかってる。
でも、人まで傷つけてるなんて思わなかったよ。
今日、体調が悪くなって、明日まで待てずに、
急患で診てくれる病院を探した。
当番医になっている病院には、
自分の診てほしい科がなくて。
あちこちに電話をして、やっと救急病院で
「専門外ですが」
といいながらも、受け入れてくれた。
行くときは、夫に車で送ってもらった。
一人、診察を受ける。
「やはり明日まで我慢して、
専門のところに行けばよかったかも」
と思いながらも、一応医者に診てもらった安心感もあった。
帰りはお迎えにくるからと言われていたのに、
電話をしなかった。
なんだか歩きたかった。
泣きながら。
一人でいたい気分だった。
下しか向けず、ひたすら歩く。
電話１本することが、お迎えをお願いすることが、
迷惑のような気がしたのだ。
この夕方の混んだ道を、子供を連れて、
ただ迎えに来てもらうことが、悪いことに思えたのだった。
汽車やバスも私の横を通り過ぎた。
私には乗れないのだ。
パニックになってしまう・・・。
家に帰るなり、夫に叱られた。
「なぜ、電話をしなかった？痛いから病院へ行ったのに、
自分で余計に痛くしてどうなる？
約束したでしょ？」
「自分が痛くなるだけじゃなく、
治らなかったら余計にみんなに迷惑でしょ？
みんな心配してるのに」
自分がみんなに悪いと思っても、それは結果的にもっと
迷惑をかけることになるのだ。
自分で自分を傷つけて、
みんなにはそれで「ごめんなさい」のかわりの
つもりなのかもしれない。
でも、本当はちがう。
もっと、迷惑なのだ。
私の存在自体が迷惑ではないのだろうか？
明日は、ちゃんとした病院へ行こうと思います。
ごめんなさい・・・。
